DNAに取り込まれたリボヌクレオチドがゲノムを不安定化するメカニズムを提唱

生体内ではゲノムDNAの複製中に、DNA複製酵素によってRNA前駆体(リボヌクレオチド)が基質として取り込まれることがあります。ヒトで一部のがんや炎症性神経疾患患者の細胞ではそれらを除去修復する酵素に異常が起きており、ゲノムにリボヌクレオチドの蓄積がみられます。この様なゲノム上の「異物」の蓄積が、哺乳類細胞でいかなる分子機構を介してゲノム不安定化を引き起こすのかはよく分かっていません。本研究では、DNAに取り込まれたリボヌクレオチドがDNA配列を書き換えてしまう「突然変異」を誘発するメカニズムを紐解きました。細胞内で正常に除去されなかったリボヌクレオチドは、チロシルDNAホスホジエステラーゼという修復酵素を介した「誤りがちな修復経路」が働き、その結果として突然変異形成が促進されます。正常なDNA修復機構が働かない場合、この様な誤りがちな経路を介してゲノム恒常性が損なわれ、細胞のがん化や疾患につながると考えられます。

Takeishi, A., Kogashi, H., Odagiri, M., Sasanuma, H., Takeda, S., Yasui,M., Honma, M., Suzuki, T., Kamiya, H., Sugasawa, K., Ura,K., Sassa, A. (2020). Tyrosyl-DNA phosphodiesterases are involved in mutagenic events at a ribonucleotide embedded into DNA in human cells. PLoS One, 15 (12): e0244790.

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